プレ更年期の体の不調

疾患説明

30代後半から40代頃をプレ更年期といいますが、この頃は更年期に向かって女性ホルモンが穏やかに減少を始めます、その為ホルモンバランスの崩れから自律神経の乱れを起こし、不調が出易くなる時期でもあります。本格的な更年期の症状が出る前に、予防も含めてプレ更年期の不調の原因や対策法をご紹介したいと思います。

西洋医学的なお話し

更年期とは?

『閉経の前後5年間』と定義されていて、一般的に日本人の閉経が50歳前後なので40代半ばから50代半ばの10年間が更年期にあたります。この更年期には卵巣の機能が衰えはじめ、それにより女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の分泌が減少します。それによりホルモンバランスが崩れる事で自律神経の乱れを起こし様々な不調が出てきます。

プレ更年期

更年期に入る前段階の30代後半から40代半ばの頃で、更年期程ではないですが、ホルモンの分泌が緩やかに減少し始める時期で、それに伴い自律神経の乱れによる症状を起こしやすくなります。
最近では、ストレスや寝不足や過労の影響から不調が出る方が多い様です。

東洋医学的なお話し

女性特有のバイオリズム(月経周期)

体と時間・周期の関係性(バイオリズム)

人には朝から夜といった1日24時間、春夏秋冬といった1年のバイオリズムがありそれぞれの時間や時期によって身体は変化をしています。そういった男女共有のバイオリズムとは別に、女性には月経周期という特有のバイオリズムがあり、子供を育む為の準備をしています。

少し西洋医学的な話になりますが、約一か月(25~38日)の周期で卵胞期→排卵→黄体期→月経を繰り返していて、それぞれの時期に女性ホルモンが分泌されています。

更年期は卵巣機能の低下により月経周期が長くなったり短くなったりして、バイオリズムが崩れる事でホルモンと体の反応のバランスも乱れ様々な不調がでてきます。

東洋医学的にみると、体の一定の周期性であるバイオリズムに対して、加齢による原因で体が月経の周期性について行く事が出来ず、そのギャップによって様々な不調が起こっていると考えられます。

次は加齢による体の変化について東洋医学的な女性の体の捉え方からお話します。

7の倍数でみる女性の体の変化

腎気による体の成長と老化

東洋医学では女性の成長を7の倍数で区切っています。(男性の場合は8の倍数)
『黄帝内経』という東洋医学の基本になる古典の中の【上古天真論】に

・七歳にして腎気盛んに、歯更はり髪長す
二七(二×七→14歳)にして天癸至る、任脈通る、大衝の脉盛にして月事時を以て下る、故に子有り
三七(三×七→21歳)にして腎気平均なり眞牙生じて長く極る
四七(四×七→28歳)にして筋骨堅く髪長く極り身體盛壮なり
五七(五×七→35歳)にして陽明の脉衰え、面始て焦し髪始て堕り
・六七(六×七→42歳)にして三陽の脉上に於て衰う、面皆焦る髪始て白し
七七(七×七→49歳)にして任脈虚し大衝の脉衰少し天癸竭て地道通せず、故に子無也

という様な事が書かれています。
細かい内容は今回は置いておきますが、子供を産む為の体の成長を腎気の盛衰を基準にして書いています。腎気とは生命エネルギーのようなイメージをもって頂くと良いかと思います。
この生命エネルギーは成長期にどんどん盛んになり体を成長させ、また子供を宿し産むパワーにもなります。このイメージで文章のポイントだけ要約すると

二七(14歳)頃に初潮を迎えます。
三七(21歳)頃に腎気が最高に達します。
四七(28歳)頃に体も成熟し大人として出来上がります。(気力体力が一番充実している時です)
五七(35歳)頃から衰えが始まります。
七七(49歳)には閉経を迎え子供が出来なくなります。

という様な変化が女性の体に起こります。
腎気(生命エネルギー)の盛衰で見ると

7歳頃から徐々に上がり始めます。
21歳頃に最高潮になります。
35歳頃まで最高が続きそこから少しづつ下り始めます。
49歳には子供を宿せる程の腎気が無くなり閉経します。

今でいうとプレ更年期が35歳頃で49歳頃が更年期といえると思います。

次は人の一生を見た時にプレ更年期や更年期はどの様な時期なのか四季に例えてお話します

人の一生を四季に例えると

自然には春夏秋冬といった四季があります。日本では特にその四季を感じる事ができますね。
四季にはそれぞれの特徴があります。

春は発陳といわれ、生き物が活発に動き始める時期で少しづつ上向きのベクトルが生まれます
夏は蕃秀といわれ、生命活動が最盛を迎える時期で、エネルギーが最高潮になります。
秋は容平といわれ、最高潮から冬に向けて落ち着いてくる時期下向きのベクトルが出てきます
冬は収蔵といわれ、生命活動が落ち着き、エネルギーを蓄える時期で動物でいう冬眠期です。


そして東洋医学の基本的な考えですが、自然界で起こっている事は人の体にも当てはめる事ができます。

春は、成長段階にある幼少期青年期前半(中学生頃)
夏は、体が完成し最も活発になる青年期後半(高校生頃)成年期
秋は、少し体が衰え始める壮年期
冬は、老後を迎える老年期

このように見ると夏から秋に変わる頃がプレ更年期、秋半ばから冬が更年期にあたると思います。
プレ更年期や更年期は老年期に向けて、季節いう所の夏から冬に向けて最高潮のエネルギーを上手く収束してく秋の時期になります。なのでどの様に上手く収束していけるかが、この頃に不調を出さない為に大切な事になってきます。

プレ更年期の不調の原因

東洋医学的な体の見方から女性の体についてお話させて頂きましたが、このような視点でプレ更年期の不調の原因を考えると

腎気(生命エネルギー)の過度な消耗

という事が最も大きな原因ではないかと思います。
最近ではバリバリお仕事をされている女性も増え、様々なストレスに気を消耗し、それに加え寝不足や過労が重なり体がジリ貧になっている方が多いと思います。
なので、腎気が衰え始める30代後半頃に自律神経が乱れやすくなり、様々な不調が出るのだと思います。

そしてそのまま本格的に更年期を迎えると、更に腎気の衰えが進み月経周期のバイオリズムに体が上手く対応出来なくなり更なる不調を起こしてしまいます。

四季と体の話しをしましたが、プレ更年期や更年期にあたる秋の特徴の様に全盛期から落ち着く時期に上手に収束出来る様に、上手く着地出来る様に、体を対応させていく事が大切になってきます。

更年期を穏やかに過ごす為の事前準備

腎気(生命エネルギー)の消耗を抑える事をポイントとした養生法

しっかりと体を休める事
これが一番大切な事です。腎気を保つには体を無理せず、適度に休む事が必要です。
また十分な腎気を確保するには睡眠が無くてはなりません。

●気を消耗し過ぎない事
仕事や日常でのストレスもそうですが、この情報が多い時代色々な事に気をむける事が多いと思います。調べればすぐに情報が入り、一緒に様々な人の意見や愚痴を目にする事が出来ます。情報収集は大切な事もありますが、あまり神経質になり過ぎて必要以上に気を消耗しない事が重要です。

健康の基本(食事 睡眠 運動)のバランスを整える事
規則正しい食事と適度な運動、十分な睡眠この三つを出来るだけ乱れる事無く生活する事で腎気の消耗を防ぐ事が出来、多少の無理をしてもリカバリーする事が出来ます。

●不調が続く時は鍼灸治療を
腎気の消耗によって月経周期に合わせらなくなったしまったお体の治療を行います。
加齢による体の生理機能の低下に逆らう事は出来ませんが、健康に美しく年を重ねる事は出来ます。
東洋医学的な養生法や治療で健康をお手伝いできます。

プレ更年期の不調の鍼灸治療例

不眠 めまい/40代前半 女性 

●症状
仕事が忙しくなっていた頃に夜が眠りづらくなり、次第にめまいがする様になった。
一旦仕事を休職して症状が落ち着いていたが、最近仕事を再開し始めてまた不調の兆しが出てきた。
数年前から生理前になると体がだるくなるといった不調が出る。

●治療の方針
仕事の過労によって体力を消耗し過ぎている所に、仕事での悩み事などに気を使い過ぎる為に不眠になり、体力を補充する機会も無くなり、めまいなどのいわゆる自律神経の乱れの症状が出ている状態だったので、しっかりと体を休める事が出来る様に体の緊張を緩める治療とどうしても気が張ると首や肩の鬱滞を起こしそれがめまいの原因になるので、首肩のコリをほぐし鬱滞を解除する様な治療を行いました。(仰向けでお腹と足、うつ伏せで背中をお灸と鍼を使っての施術です)

●治療経過
初診日の夜いつもより寝つきが良く、朝もスッキリ目覚める事ができた様です。
それからも以前より寝つきが良くなり、体が元気になって行くのを感じました。
5回程治療をしてめまいも出なくなりました。

鍼灸師より一言
治療によりしっかりと睡眠が取れる様になったことで、悪循環から抜け出し良い循環へと体が戻り始めたので不調が改善していきました。体の変化のタイミングには個人差がありますが、だいたい4.5回くらいで良い変化が出始める事が多いです。そこからは家庭での養生に気を付けて頂けると調子はどんどん良くなるので、月1回位メンテナンスで治療をさせて頂くといったペースで調子を保てる様になります。

背中の痛み 体のだるさ/30代後半 女性

症状
慢性的な左背中のダルイ痛み、ストレスを感じる様な事があると酷くなる。
夜はスッキリと眠れない日が多く、朝は寝た気がせず何となくダルイ感じがする。
以前に胃もたれが酷い時期があった。

治療の方針
症状の出ている所が胃の裏あたりで、脈やお腹の状態を診ても胃腸に反応が出ていました。仕事で座って机に向かう事が多いとの事だったので、姿勢からくる筋肉の凝りも加わって症状が慢性化している様な状態でした。治療は胃腸の機能の調整と背中の筋肉を緩める治療を中心におこないました。

●治療経過
初診の後は良く眠れ、体がスッキリとした様でした。背中のダルさも軽くなっている様でした。
そこから週1回位のペースで5回位治療したところ位で背中のダルさはほとんど無くなりました。
睡眠も良く取れる様になり、朝の目覚めも良くなられました。仕事で無理をすると症状が出来る事があるので、メンテナンスとしての月1回の治療に来られています。

鍼灸師から一言
胃腸の調子が悪くなると、全身の気血の巡りに影響するので筋肉の凝りや痛みに繋がる事があります。今回はありませんでしたが、ここに便秘が加わると体の老廃物を排泄するルートも無くなってしまうので、より巡りが悪くなり不調の悪循環に入ってしまいます。何気ない不調のうちにしっかりとケアする事が先の健康の維持に繋がるので、早め早めに体を気遣ってあげれると良いですね。


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